会社設立の費用はいくら?会社形態で手続きも変わる?株式会社と合同会社の維持費など解説

会社設立の費用はいくら?会社形態で手続きも変わる?株式会社と合同会社の維持費など解説
はじめての会社設立は、「いくらかかる?」「どの手続きから?」「株式会社と合同会社は何が違う?」と疑問が尽きません。
この記事では会社設立の全体像をやさしく整理。
費用の相場からスケジュール、設立後の届出・維持費まで最短ルートで解説します。
会社設立|何から始めればいい?
会社をつくる前に、個人事業との差や会社形態、税金の基本を押さえておくと、その後の判断がブレません。基礎が見えれば、つづく費用やスケジュールの見積りが一気にラクになります。
会社設立とは?個人事業との違いとメリット
会社設立とは、法務局で登記して法人格を持つこと。個人事業との主な違いは次の3点です。
- 信用力:法人名義の契約・融資・採用で有利になりやすい
- 責任範囲:原則“有限責任”で、出資額を限度に責任(※例外あり)
- 税務・社会保険:法人税申告や社会保険加入が前提となり、制度の厳密さが増す
これらの違いは、「どの会社形態を選ぶか」に直結します。
次の章で株式会社・合同会社・一般社団の使い分けを確認しましょう。
会社形態の選び方
- 株式会社:対外的信用が高く、株式発行など資金調達の柔軟性がある。設立コストは高め。
- 合同会社:設立・維持コストが低い、意思決定が軽快。近年増加。
- 一般社団法人:非営利型の器として事業運営・助成金活用のケースも。
資本金は1円から可能ですが、銀行口座開設・信用・登記税の観点から100万〜300万円が実務上の目安。
形態と資本金の目星がついたら、つぎは税金・社保の基本コストを把握して資金計画に落とします。
税理の基本(法人税・消費税・社会保険・地方税の概観)
- 法人税等:利益に対して課税。中小は軽減税率の適用枠あり。
- 消費税:原則、設立1期目は免税になりやすいが、資本金1,000万円以上など例外あり。
- 地方税(均等割):赤字でも年7万円前後(規模・自治体で変動)の負担が発生。
- 社会保険(健保・厚年):原則強制適用。会社負担は賃金約15%目安。
コストの輪郭がつかめたら、次は初期費用の見積りと設立までの期間を具体化していきます。
会社設立の費用・期間・スケジュール
ここでは初期費用の相場と最短スケジュール、そして専門家報酬の目安をまとめます。数字が見えれば、着手タイミングも決めやすくなります。
設立費用の内訳と相場
株式会社(電子定款前提)
| 登録免許税 | 資本金 × 0.7% (最低15万円) |
株式会社設立時に 必須の税金 |
|---|---|---|
| 定款認証 | 約3万円 (公証役場)+謄本手数料等 |
公証役場での 認証手続きに必要 |
| 収入印紙 | 0円(電子定款の場合) /4万円(紙定款の場合) |
電子定款なら非課税、 紙定款のみ課税 |
| 印鑑作成 | 5,000円〜 20,000円 |
実印・銀行印・角印などの作成費用 |
合同会社
| 登録免許税 | 資本金 × 0.7% (最低6万円) |
株式会社より 安く設定されている |
|---|---|---|
| 定款認証 | 不要 | 公証役場での 認証不要のためコスト軽い |
| 印鑑等 | 5,000円〜20,000円 (株式会社と同様) |
実印・銀行印・角印などを作成 |
費用が見えたら、実際にどれくらいで設立できるのかを確認しましょう。
最短どれくらいで設立できる?スケジュール例
スケジュール例
| 超短期型 | 5〜7営業日 | 事前準備が万全なら、 電子定款作成から登記申請まで 一気通貫で完了可能。 スピード重視。 |
|---|---|---|
| 標準型 | 2〜3週間 | 商号・目的の精査、 定款作成、資本金払込、 登記完了、 銀行口座開設までを段階的に実施。 |
| ゆとり型 | 約1ヶ月 | ロゴ・ドメイン・会計ソフト・ 社内規程・助成金準備を 並行して進め、安定した運営体制を構築。 |
スケジュールの要所では専門家の力を借りると手戻りが減ります。次に、依頼先ごとの役割と費用感を整理します。
司法書士・行政書士・税理士の費用と役割の違い
- 司法書士:登記の専門家。
相場は8万〜12万円前後(会社形態や地域で変動)。 - 行政書士:定款作成・認証サポート等。
相場は3万〜7万円前後。 - 税理士:設立時の税務設計・届出、会計ソフト導入、資金繰り・融資支援。
顧問は月1〜3万円+決算10〜20万円目安。
「誰に、どこまで頼むか」が決まったら、いよいよ具体的な手続きと必要書類に進みます。
会社設立の流れと必要書類

最初の判断でミスを起こさないために、決めること→作るもの→申請の順でチェックしましょう。順番を守るほど、全体がスムーズに回ります。
設立前に決めること(会社設立 やることリスト/印鑑)
- 商号(同一商号・類似商号の調査)
- 事業目的(将来の拡張も見据えて幅を持たせる)
- 資本金・出資者・持株比率(融資や節税への影響)
- 決算月(繁忙期回避・節税バランス)
- 本店所在地(バーチャルオフィスは銀行審査に留意)
- 会社実印・銀行印・角印(電子印の準備も推奨)
ここまで決まれば定款作成と登記申請に進めます。次項で具体的な手順を確認しましょう。
定款作成・認証〜登記申請の実務(会社設立 登記/法務局)
- 定款作成→電子認証(株式会社のみ認証要)
- 資本金払込(発起人名義口座へ入金・払込証明の準備)
- 登記申請(登記申請書、就任承諾書、印鑑届など)
- 登記完了→印鑑証明・登記事項証明書取得(口座開設・各種申請に必要)
登記が終われば各官庁への届出や口座開設に移ります。ここを素早く回すと、営業開始が早まります。
設立後すぐの届出・口座・インフラ整備
- 税務署:青色申告の承認申請、給与支払事務所等の開設届、減価償却・棚卸等の方法届出 など
- 都道府県税事務所・市区町村:法人設立届
- 年金事務所・ハローワーク:社会保険・労働保険の原則必須手続き
- 銀行口座・クレカ・会計ソフト・給与ソフト:運用開始に直結
これらの作業負担を下げるには、次のクラウド会計の活用が近道です。
クラウド活用でミスと時間を削減
- freee、マネーフォワード、弥生は、口座・クレカ連携→自動仕訳→月次試算→年次決算まで一気通貫。
- 税理士とのリアルタイム共有で、申告や資金繰りの精度が上がり、紙・Excel文化から脱却。
運用基盤が整ったら、つぎは最初の3ヶ月の税務・会計設計で失敗を防ぎます。
税務・会計の初期設計|“最初の3ヶ月”が勝負
スタートで決めた“会計の型”が、その後の節税・資金繰りを左右します。早い段階で型を固めましょう。
届出書類と提出期限
| 青色申告の承認申請 | 設立から3ヶ月以内 または 事業年度終了日の前日、いずれか早い日まで |
節税効果が大きい青色申告を選択できる。 期限を過ぎると1年間は白色申告になるので要注意。 |
|---|---|---|
| 減価償却・棚卸資産評価方法の届出 | 設立直後〜 最初の申告まで |
採用する方法により利益の計上時期が変動。 キャッシュフローや将来の利益平準化に直結するため慎重な判断が必要。 |
| 消費税の課税・免税判定 | 資本金1,000万円の有無 /特定期間の売上・給与額判定 /インボイス登録の有無 |
設立1期目は原則免税だが、資本金要件などで課税対象になることも。 インボイス対応を見据えた判断が不可欠。 |
期限管理の次は、社内ルール化でミスを未然に防ぎます。
資金繰りと会計処理の初期ルールづくり
会社設立直後は売上が安定せず、資金繰りや支払い管理のルールが曖昧だと、思わぬキャッシュ不足や税務トラブルに直結します。最初の3ヶ月で「お金と帳簿のルール」を固めることが成功の分かれ目です。
月次決算の締切日・支払サイトを明文化
たとえば「請求書は毎月◯日締め、翌月末払い」といったルールを決めておかないと、入金よりも支出が先行し、黒字なのに資金がショートするケースが現実に起こります。月次決算を早めに締められる体制を作ることで、資金の流れが見える化されます。
役員報酬の決定タイミング
役員報酬は期首から3ヶ月以内に固定額で設定するのが基本です。途中で増減すると「損金不算入」となり、想定外の法人税負担が発生することがあります。実際に、起業家が事業拡大の勢いで役員報酬を途中で引き上げ、翌年の税額に驚いたという事例は少なくありません。
交際費・旅費規程・稟議ルール
接待交際費や出張費の扱いをルール化しておかないと、プライベート支出と混同され、税務調査で否認されるリスクが高まります。たとえば「日帰り出張は日当◯円」「交際費は上限◯万円で稟議必須」と明文化しておけば、経費処理がスムーズになり“税務に強い会社体質”が作れます。
会計ソフトの選定と初期設定のポイント
- 業態に合う機能:在庫管理が必要な業種なら在庫モジュール、プロジェクト型ビジネスなら原価管理が必須。
- ワークフロー対応:承認フローや証憑保存、電子帳簿保存法への対応が整っているか。
- 税理士と同じツールを使う:ソフトが共有できると、月次チェックや質問がスムーズでコミュニケーションコストが激減。
ここまで整うと、融資や補助金申請に必要な数値計画も正確に出せるようになり、資金調達の確度が上がります。
資金調達・助成金・創業融資を取りこぼさない
設立直後の一番の失敗は「資金が尽きる」ことです。売上が立つ前に資金ショートしないためには、いつ・どこから・いくら借りるかを具体的に設計する必要があります。
創業融資の通し方
- 創業計画書の精度:売上の根拠、原価計算、入金サイトなどを数値で説明できるか。
- 自己資金の比率:自己資金が多いほど、銀行や日本政策金融公庫からの信頼度が高まる。
- 税理士の関与:数値の整合性や資金繰り改善策を第三者の目で補強することで、融資通過率が格段に上がる。
補助金・助成金の探し方と採択のコツ
- 情報源:J-Net21や自治体サイトを定期的にチェック。
- 申請プロセス:要件の確認→体制・KPIの設計→証拠資料の収集が基本。
- 専門家の活用:申請書の文言や数値根拠を税理士と分担すれば、採択率と実行率が飛躍的に上がる。
税理士が入ると通りやすい理由
- 補助金・融資は書類提出で終わりではなく、採択後のモニタリングも重要です。ここで税理士が伴走していれば、予算実績管理や資金繰りの修正をサポートでき、失敗リスクを下げられます。
- 数値計画に会計的な整合性を与える
- 採択後もモニタリング体制を整備
- 税務面と資金面を一体でチェックできる
こうして調達フェーズをクリアしたら、次は「失敗しがちな実務トラブル」への備えに進むのが理想です。
よくある失敗と回避策|トラブル事例で学ぶ

現場で頻発する“もったいない”を先取りで潰しましょう。小さな初期ミスが後々の大きなコストになります。
登記・届出の期限遅れ/社会保険“5日過ぎた”問題(会社設立 社会保険 5日過ぎた)
会社設立後は、税務署や年金事務所への届出に期限が設けられています。
例えば「社会保険の新規適用届」は5日以内に提出が必要ですが、現場では開業準備に追われて後回しになりがちです。
その結果、期限を過ぎてしまい、追加で指導やペナルティを受けるケースが実際に起きています。
特に人を雇う予定がある場合、この遅れは労務トラブルや従業員の不信感につながることもあります。
こうした失敗は「会社の信頼性」を損なうため、設立直後の最優先タスクとしてスケジュール化しておくことが欠かせません。
勘定科目・レシート管理の初期ミスが招く税務調査リスク
証憑の欠落・按分ルール不明は、否認リスクに直結。クラウド保管+承認フローで統制を効かせる。
この仕組みがあれば、次に解説する役員報酬や資本金の設計判断も正しく運用できます。
役員報酬と資本金の設定ミスが及ぼす節税インパクト(会社設立 資本金/節税)
資本金を最低額の1円に設定して会社を立ち上げることは制度上可能ですが、金融機関の融資審査では「体力のない会社」と判断されるリスクがあります。
実際に、創業融資を申し込んだ企業が「資本金の少なさ」を理由に融資額を減額されたケースもあります。
また、役員報酬を過度に低く設定すると、社会保険料の負担は軽減されますが、将来的な信用力や住宅ローン審査で不利に働くこともあるのです。
数字上の節税メリットだけでなく、「資金調達力」や「個人の生活基盤」への影響まで見据えることが現実的な戦略になります。
主要都市の設立サポートと手続き窓口
各地で創業支援拠点(産業振興センター等)や保証協会が相談窓口に。自治体ごとの助成・家賃補助も要チェック。
地域制度を把握したら、つぎは業種ごとの注意点です。
不動産・外国人起業・副業設立の注意点
不動産業
不動産業で会社を設立する場合、まず宅地建物取引業の免許を取得しなければなりません。
免許には供託金(保証金)を法務局や保証協会に預ける必要があり、最低でも数百万円単位の資金が必要です。
さらに、事務所ごとに「宅地建物取引士(宅建士)」を配置しなければならず、人員体制の整備も欠かせません。
例えば、宅建士が退職して不在となると免許が維持できないリスクがあるため、複数人の確保や外部との提携を検討する企業もあります。
外国人起業
外国人が日本で会社を設立する場合、「経営・管理」などの在留資格が必要となり、ビザの取得手続きが大きな壁となります。
また、銀行口座の開設には厳しい審査があり、外国籍の代表者だけでは口座開設が難航するケースも少なくありません。
さらに、会社の定款や登記簿には英語表記と日本語表記の整合性が求められるため、翻訳の正確性や法的整合性に注意する必要があります。
副業設立
会社員が副業として会社を設立するケースも増えていますが、勤務先の就業規則に「副業禁止条項」がある場合、規程違反として懲戒の対象になることがあります。
また、本業の取引先と副業が競合するような場合には「利益相反」と見なされる可能性があり、トラブルの火種になります。
さらに、個人情報や機密情報の取り扱いについても会社側から疑念を持たれやすいため、情報管理の徹底と透明性の確保が重要です。
状況に応じて専門家の並走が必要になります。次に相性のよい税理士の選び方を確認しましょう。
税理士の選び方と比較基準|“安い”より“合う”

会社設立の成功は「どの税理士と組むか」に大きく左右されます。料金が安いかどうかよりも、自社に合った伴走型のパートナーを選べるかがポイントです。そのためには、面談前に比較の軸をしっかり持つことが大切です。
面談前に確認すべき5つの比較軸
税理士を選ぶ際には、次の観点を押さえておくと判断がスムーズになります。
- 料金形態:月額固定か従量課金か。将来の成長に応じて負担がどう変わるかを確認。
- 対応スピード:メール・電話への返答時間や、緊急時のサポート体制。
- 業界実績:自社と同業の支援経験があるかどうか。専門知識の差が成果を左右します。
- クラウド連携:freeeやマネーフォワードなど、使用している会計ソフトに対応しているか。
- 資金調達支援:融資や補助金の申請で実績があるか。創業期の資金繰りに直結します。
これらを面談で具体的に確認すれば、相性の合う税理士を見つけやすくなります。
顧問契約・設立代行・スポットの違いと使い分け
比較軸が定まったら、依頼形態をどうするかを検討しましょう。
- 顧問契約:月次処理から決算までを一貫して任せる形。設立後も長期的に伴走してほしい企業向け。
- 設立代行:登記や税務署への届出を一気に任せたいときに便利。短期集中型。
- スポット契約:資金調達や補助金申請など、特定の課題だけサポートしてほしいときに活用。
自社の状況に応じて、最適な契約形態を選ぶことが設立後の安定につながります。
乗り換え・セカンドオピニオンの判断基準
- 意思決定のスピードが遅い
- 提案の幅が狭い/代替案がない
- 税務調査対応に不安がある
これらが当てはまる場合は、早めにセカンドオピニオンを検討しましょう。将来的なリスクを回避し、経営判断を強化するための重要な見直しです。
よくある質問

自分で設立は可能?どこからが専門家に依頼すべき?
可能です。定款作成・登記は独学でも可ですが、事業目的の設計・税務届出・社会保険は専門家に相談すると失敗が激減します。次の質問では形態による違いに触れます。
株式会社と合同会社、税金はどちらが有利?
税率は原則同じ。差は“税金よりも登記・運営コストと信用力”。調達・採用を重視するならKK、スモールスタートならGKが多い選択。判断に迷えば、資金計画と採用計画から逆算しましょう。
決算月はいつにすべき?節税への影響は?
繁忙期を避け、資金の谷が浅い月が運営しやすい。消費税や役員報酬設計にも関わるので、期首3ヶ月の意思決定が肝です。初年度は特に“期首3ヶ月ルール”を意識してください。
設立後、いつから消費税の納税義務が始まる?
原則1期目は免税になりやすいですが、資本金1,000万円以上や特定期間判定で課税となる場合があります。インボイス登録の有無で選択が変わるため、売上先(BtoB/BtoC)の構成から検討を。
freee/マネーフォワード/弥生はどう選ぶ?
業態に必要な機能+税理士の対応実績で選定。証憑管理やワークフロー、API連携、電子帳簿保存法対応の運用しやすさを重視。無料トライアルで初期仕訳の型まで作って比較すると差が出ます。
まとめ
会社設立費用は 株式会社:約20万円〜、合同会社:約6万円〜 が目安。登録免許税や定款に加え、税務・社保・地方税まで含めた設計が成功の分かれ目です。
費用を見える化し、スケジュール化→税務届出→資金計画→クラウド×専門家連携と進めれば、最短ルートで立ち上げ可能です。
一度、会社設立専門の鈴木慎吾税理士事務所にご相談ください。














